旅と鉄の盲腸 ＞ 戯れ言集＞ 各駅停車から始まる旅

◆◆たびたび、ぶらぶら。その２◆◆ 各駅停車から始まる旅 　私は、各駅停車の旅が大好きです。飛行機や 特急列車のように、目的地まで速く行って、より 多くの観光地を見て回るというのも旅のスタイル ですが、各駅停車から始まる旅だって、あるんで すよ。ここでは、その「各駅停車から始まる旅」に ついて、私なりに書いてみます。

　このページをご覧になられている方の中には「青春１８で各駅停車の旅がイチバンだ！」というポリシーを持った方もたくさんおられると思います。そういう意味ではいまさらくどくど書くこともないかもしれませんが、そうでない方もいらっしゃることですし、他に書くことも思い当たらないので、ちょっとだけ書いてみましょう。各駅停車、普通電車、楽しいですよ。私は各駅停車の旅をオススメします。

１．流れ行く景色をゆっくり眺める旅。
　各駅停車は「鈍行」っていうくらいですから、時間がかかって、遅いです。２地点間の移動という点から見ると一番不利な手段です。しかし、利点もあります。

　そのひとつに、「景色がゆっくりと流れていく」ということがあります。

　景色がゆっくり流れると、景色をじっくり眺められますよね。特急に乗っていれば見過ごしてしまったやもしれぬ風景に、感動することもあります。

　一番いいのは季節感がより味わえるということ。沿線の田畑で農作業をする人や木々などまでゆっくり眺められますから、「このあたりではもう稲刈りをしている」「このあたりでは桜はまだ３分咲き」などというのがよくわかります。見過ごしてしまいがちなその地方独特の家の作りなども分かりますから、車窓からその地方の文化を学ぶこともできます。

　また、窓が開きますから、一面に広がる大海原に出会ったときは潮風を胸一杯吸うこともできますね。

２．方言の渦にどっぷり浸かる旅。
　多少他の項目とかぶる内容ですが、自分の生活圏以外の所を各駅停車で旅すると、方言で「遠いところへ来た」ということを実感できますね。地元の方の多くは当然各駅停車に乗りますので、方言の渦に浸りたければ各駅停車がいいですよ。ちょっとしたことから地元の方と友達になって、穴場観光地を教えもらえれば、ラッキー。学校の登下校時間にぶつかるとかなり混みますが、それも地方独特の光景でまた楽しい。

３．思い立ったらすぐに途中下車の出来る旅。
　ぼんやり車窓を眺めていたら、気になる茅葺き屋根の家がありました。気になる大きな木がありました。「あの家は何？」「あの大木をもっと近くで見てみたい」と思っても、特急列車だと近くの駅を通過してしまうことが多いですよね。「また今度来た時に寄ってみよう」と思っても、著名な観光地でない限り、今度という機会はそうそうすぐには訪れません。

　各駅停車なら、次の駅で降りることもできます。途中下車して見たものが気に入って、しばらくそこに滞在したり、以後たびたび訪れることになるかもしれません。私がいう『各駅停車から始まる旅』とは、こういうことなんです。

　きっかけ、可能性が広がる旅、それが各駅停車の旅だと思います。

４．とにかく安い。
　各駅停車ですから、きっぷだけで乗車でき、とても安上がり。特に学生さんには青春１８きっぷがおすすめです。頭が柔らかいうちに各駅停車に乗って、学校では教えてくれないものを旅から吸収し、学び取って下さい。

５．何も遠くまで行くことありません。
　近くでも各駅停車の旅はできます。このページでは、旅を『非日常の体験』と定義づけています。だからいつも通勤通学で使っている路線でも、普段は乗らない近郊の路線に乗るのでも、いつもと違う駅に降り立てばそれは充分に旅といえる、と私は考えます。

　快速に乗り遅れた。
　
　天気が良くて、まっすぐ家に帰るのがもったいない。

　そんなときは、毎日使う駅のひとつ手前の駅、ひとつ向こうの駅で降りてみませんか。いつもと少し違う経路で帰ってみませんか。

　知っているようでも案外知らないとなり町。駅前に洒落た喫茶店があったり、花屋のお姉さんがきれいだったり？、おいしいラーメン屋さんを見つけたり、ちょっと探検してみると、意外に楽しいものに出会うことがあります。いいもの捜しに、明日は定期券で途中下車してみませんか？

６．駅を楽しむ。
　気になる駅、雰囲気のいい駅というのがありますね。このまま行っても今日の宿泊地には少し早く着いてしまうし、というときは、迷わず降りてみましょう。

　山あいの、せせらぎ聞こえる小さな駅。

　海鳴りが聞こえる、誰も居ない無人駅。

　次の列車が来るまで、あなたは全くの自由の身。季節が良ければ、駅のホームでぼんやりするのもいいですよ。

　駅は不思議な場所。列車に乗り降りする場所ということ以上に人を惹きつけるものがあります。名も知らぬ駅に降り立って、そんな雰囲気を少しでも感じていただければ、と思います。

　・・・「もっと速く移動できる交通機関で行って、余った時間で行った先をあちこち見て回ればいい」という方は多いと思います。それが一般的な考え方だと思います。しかし、そこを敢えて時間をかけて行くということに価値があるんではないか、と私は思います。行く過程も大事にしたい。移動を単なる移動以上に楽しみたい。最も贅沢な時間の使い方だと私は思います。

　せっかくの休みなんだもの、普段のように急ぐことはないんです。せめて旅くらい、ゆっくり行きましょうよ。

　各駅停車で旅に出よう。私からの提案です。